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日本で着メロビジネスが大金を生み出し始めた頃、
同じことを欧米でやって儲けたいと考えていた
若いアメリカ人男性のビジネスマンは、
歯をむき出しにして唾でも吐きかけるような感じで
"Stupid, but important."
と、着メロビジネスのことを評していた。
「こんなクソみたいなものをビジネスにして楽しいわけがないが、
金が儲かるんだからしかたがない」
という態度を、隠そうともしていなかった。
ちょうどその話をしていた席上で、ダースベーダーの着メロが鳴ったのを覚えている。
警戒すべき相手からの着信があると、ダースベーダーや
ジョーズのテーマが鳴るように、私は設定していた。
私は、そのように、どんな人からか、あるいは、着メロかメールかスケジューラか、
によって、様々な違った種類の着メロが鳴り、音を聞いただけで、
何の知らせか分かるようにしてあって、
それによってチープなリズムが刻まれる日常生活を、
けっこう楽しんでいた。
新しい友人、知人、顧客、同僚が増えるたびに、
その人を的確に表すようなユーモラスな着メロを探し出したり、
その人との関係が良好になってきたり、逆に険悪になってきたりするのに合わせて、
着メロを変えるのが楽しかった。
ソーシャルゲームを企画開発しているプランナーやエンジニアが、
「オレだってソシャゲーなんて作りたくないよ。
でも儲かるんだからしかたがない」
などと言っているのを聞くと、あのアメリカ人の姿とダブることがある。
「こんなクソみたいな商品を作らされてるオレは不幸だ」
とでも言いたげなのだ。
ところが、その人たちが「ほんとうに良いゲーム」だと思うものを作っても、
多くの人にとっては、お金を払ってまでやりたいものではなかったりする。
むしろ、ソシャゲーの方が、よっぽど多くの人が、お金を払ってまでやりたい
ものだったりする。
「儲からないけれども、いい商品を作ったり売ったりして生計を立てている」
と思いながら仕事してる人たちと、
「クソみたいな商品を作ったり売ったりして稼いでいる」
と思いながら仕事してる人たちと、
どちらの方が、より多くの人を幸せにしているのか、というと、
必ずしも前者だとは限らないと思う。
「自分が作りたいモノ」と「多くの人が欲しがっているモノ」
はけっこうズレていることが多い。
だから、みんなが「自分が作りたいモノ」ばかりを作っていたら、
ある商品はやたらと供給過剰であまりまくっている一方で、
多くの人が欲しがっているのに供給されない商品、
というのがたくさんでてきてしまう。
このズレがあるために、
「みんながやりたい仕事をやってるだけで、
みんなが欲しいものを手に入れられる」
なんてユートピアはこの地上には存在し得ない。
誰かが我慢して、やりたくもない仕事をやらないと、
多くの人が欲しいものを手に入れられないように、
この世界はできているのだ。
そして、これをやらせる仕組みが市場メカニズムだ。
市場原理は、金銭的インセンティブと引き替えに、
生産者にやりたくもない仕事をやらせて、
消費者の欲しい物を供給するシステムだという側面がある。
あの若いアメリカ人ビジネスマンは、着メロをくだらないと思っていたけど、
一般人も含めて、同じ感覚を持っている欧米人はけっこう多かったように感じた。
それと同じように、ソーシャルゲームも、多くの日本人が
くだらないと思っているけど、
実際には、案外、着メロのように、人々にささやかな幸せを
提供するもののような気もするのだ。
幼い頃、信長の野望というゲームで、
お金や領地が増えていくのがすごく楽しかった。
そして、そのお金や領地自体は、それ単体ではたいして面白いものではない。
それに意味と価値を付与しているのは、信長の野望というゲーム環境全体だったのだ。
それは、日本銀行券がそれ単体では単なる紙であるけれども、
それを取り巻く環境全体がそれに意味と価値を付与していることの相似形だ。
その意味で、デジタルアイテムの魅力ははゲームの魅力の鏡だし、
デジタルアイテムをお金を払ってまで欲しいと思う人がたくさんいるということは、
それだけ人々がそのゲームを魅力的だと思っている証左なのではないだろうか。
もちろん、過剰な射幸性や欺瞞性は問題なので、
そこは是正されなければならないけれども、
適度なアルコールが食文化を豊かにするように、
適度な射幸性やギャンブル性は娯楽を豊かにする重要な構成要素だ。
そうしてみてみると、ソーシャルゲームで金を稼ぐこと自体が
社会的に無価値であるかのように言うのは、ちょっと違うんじゃないかと思うのだ。
この記事は以下の記事の続編です。
ユーザに錯覚を起こさせて儲けるビジネスのメカニズム
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